2024年10月27日 ＜住民自治はここから始まる＞（レジュメ）

はじめに
洛西ニュータウンの衰亡(京都市南西部の大原野地区1976年入居開始―2000年人口減少―2020年2万1700人ピーク時の60％)＝「京都市が推進した巨大人工都市」　→　地下鉄の延伸の頓挫？　→　都市住民が不在の都市計画
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人工都市＝植民都市　白紙に描く機能的美の都市(哈爾濱)＝近代都市
H・ルフェーヴル『都市への権利』(1968年)
ヨーロッパの古代・中世都市＝芸術作品(街並み、建築様式、道路・・)＝住まう
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近代の産業都市＝技術品―信号表示の体系＝生理的行動(食べる・寝る・遊ぶ・・)
＝機能美の都市は芸術品としての都市の解体のうえに出現する

一　災害資本主義と植民地主義
ナオミ・クライン『ショック・ドクトリンー惨事便乗型資本主義』(2007年)
「災害の後片付けと称して公共施設やその地に根付いた地域社会(＝コモンズー引用者)を一掃し、すかさずそこに企業版「新エルサレム[聖地―引用者]」を打ち立てること」(Klein N.[2007]一〇頁)
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災害資本主義を可能にする条件＝地域社会のコモンズを解体する政治の介入―植民地主義
→　地域社会が外部権力による統治するものと統治されるものの関係に変質する
N・クライン『楽園をめぐる闘い : 災害資本主義者に立ち向かうプエルトリコ』星野真志訳、 堀之内出版、2018年]
2017年9月ハリケーン・マリア　→　公共部門の縮小、学校の民営化、公務員の削減
米国の政府と巨大資本による米国の自治連邦区への政治介入　→　プエルトリコ内部に支配‐被支配の社会関係の創出　→　エネルギー、食糧、教育の外部権力による支配　→　最優等地のリゾート化―「植民地主義的実験」「侵略行為」＝「現地の人びとから固有の文化、自信、そして権力を剥ぎ取るように設計されたシステム」
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外部権力に対する住民の抵抗―住民による複合的主権の確立＝エネルギー、食糧、教育、文化、住宅、水道の自己管理
＜二つのユートピアをめぐる闘い＞
「島々の富が注意深く民主的に住民たちによって管理されるプエルトリコというヴィジョンと、ある者たちは「プエルトピア」と呼ぶ、サンファン[プエルトリコの首都]とニューヨークシティの高級ホテルの舞踏室で呼び起こされている自由至上主義的計画は、どちらもユートピア的なプロジェクトである。一方の夢は人びとが自分たちの土地、エネルギー、食糧、そして水に対して集団的な主権を行使したいという願望に、そして他方の夢は少数のエリートが、際限のない私有の利益を蓄積するべく、政府の影響力から完全に開放されたいという願望に支えられている」(ibid.,邦訳二九―三〇頁)

二　日本の地方政治の植民地主義的本性
　１　企業主導型資本主義による都市の植民地主義的統治
企業城下町、企業文化と消費様式、性別役割分業、家族形態(核家族)、消費協同組合
　２　都市行政機関と企業との連携による地方政治
市民団体・消費者団体・労働組合と地方行政との連携
―東京の都電撤去をめぐる社会闘争(1960年代)
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地域の住民組織の排除・衰弱、企業と地方行政の連携による地方政治
１)　コンビニの公共空間化＝地域社会における共同性(町内会、近隣関係)の崩壊
２)　自治体業務の民営化―PFI　Private Finance Initiative=民間資金を利用した公共事業の推進
3)　コンビニと自治体との地域包括連携協定―地産地消・行政事務の引き受け、災害の緊急避難所　

• 米国の事例―1980年代以降の米国の新自由主義政策の出現(政府の経済政策)は、それに先立つ地方自治体政治の植民地主義的変質(都市行政の転換)から始まった

D・ハーヴェイ『新自由主義』
(2005年)1970年代におけるニューヨークの財政危機を契機とした自治体政策の転換
1960年代以前＝市民団体・労働組合と自治体職員との連携　→　1970年代＝自治体と金融機関との連携による都市開発計画の推進1970年代　→　この手法を連邦政府が導入して国政レベルでの新自由主義政治が始まる＝1980年代のレーガノミックス

３　都市行政の公共経営化
公共経営政治Public Management　村澤真保呂『都市を終わらせる』2021年
「民間企業の経営理念や経営手法を導入することによって、行政部門の効率化と活性化を図る」
地方行政とは、地域住民に公共サービスを提供する企業の活動である　→　官僚主義的なお役所仕事から経営資源の有効活用と経営の効率化を追求する行政への転換　→　＜自治体＝企業＞説―自治体の首長は代表取締役、市民は株主あるいは消費者、自治体職員は会社の社員
トップダウンの企業経営政治　→　維新政治の台頭
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＜企業経営としての地方行政＞からの地域住民の排除　→　地域住民の企業経営への協力・動員

三　植民地主義的な都市政治からいかにぬけだすか？―コモンの自治
地域の共有資源(自然環境・自然資源・社会的基盤整備・地域の文化と歴史と景観・情報・知識・技術など)を住民が共同で創造し組織する
　１　植民地主義的人間観・世界観を転換する
自由で孤立した個人の自己完結的存在＝能力主義、人的資本論、利己主義
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チューブ人間―口から食料を入れて、排せつする、生殖する
「人間と言うのは一本のチューブであり、その両端に口と肛門がついていて、外から入ってくるものの通り道に過ぎない」松嶋健・文化人類学
→　無数のチューブがつながって成り立つ世界＝生命体の生態系のつながりのなかにある世界
松村圭一郎『くらしのアナキズム』　エチオピアの村の暮らし
コーヒー豆の選別作業をする母親が生後8か月の赤ん坊を居間に放置。
「最初、年の離れた兄弟が赤ん坊とたわむれていた。やがて飽きてしまい、庭で遊びだす。すると祖母が赤ん坊の横に座って話しかける。‥祖母が出ていくと、今度は隣の女性が赤ん坊を抱っこする。・・人が入れかわり立ちかわり出入りし、家事も育児も、居合わせた人ができることをやる。・・家族や家の垣根が低いので仕事や負担を分かちあえるのだ」43－44頁

２　商品世界の外へ抜け出す
植民地主義の世界＝商品と商品を生産する企業しか見えない世界
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植民地主義から抜け出す＝商品の外の世界を見る
１　再生産労働―出産、育児、家事、ケア　←　賃金労働
洛西ニュータウンは病院が少ない
２　自然の働き＝物質代謝　　　　　　　　←　市場取引の商品世界
３　公共の活動―社会的共通資本　　　　　←　私的資本(貨幣、機械、技術、知識)
＝地方政治とは、商品の外のひとびとの暮らしを当事者である住民が自己統治する営み

３　コモンの自治に創意工夫して取り組む
１)　ミュニシパリズム＝地域自治主義
自分たちの共有資源の管理を他者に託さずに、共同でおこなう政治
→　地域住民が主体で、自治体行政や企業は住民自治の道具＝民主主義の原義
村澤真保呂『都市を終わらせる』
大津市日吉台の取り組み　1985年ニュータウンー京都・大阪のベッドタウン
Cf.　洛西ニュータウン
人口流出による過疎化　→　病院・学校・幼稚園・公民館の統廃合　→　自治会の討論会　→　「日吉台まちづくり協議会」2012年　公民館の民営化反対、バスの利用の呼びかけ
日吉台新聞の発行―地域課題の共有、住民意識の醸成
コミュニティ・カレッジ　住民の関心のある講座開設
地域から市議会議員選出
「自分たちがこのまちに住んでいる、という一種の地域共同体意識」が生まれる
　　２)　協同組合の生態系と社会的連帯経済
①　社会生活に必要なすべてのものを協働の取り組みによって調達する
「ゆりかごから墓場まで」の協働の取り組み＝社会生活に必要な事業を協働で興す
②　すべての事業、協同組合の水平的ネットワーク
③　自治体・政府のサポート(資金・技術的支援、教育・・)　
→　2011年M15運動　→　地域政党バルセロナ・イン・コモン
　　3)　気候市民会議
①　脱炭素社会への技術的転換と「公共的な意思決定をより参加的・熟議的なものにする」＝「気候民主主義」―ホームレス、障碍者、外国人などの参加
②　社会生活のすべての領域を包括する課題―エネルギー、食糧、自然環境、都市交通、教育、文化・・
→　社会諸領域を地域住民の共同統治によってネットワーク化する
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洛西ニュータウンはだれのものか＝京都市のものでも、大手開発デベロッパー・不動産・金融資本のものでもない、そこに住む住民のもの　→　住民の社会的協働関係の創造
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所有権・市場取引の自由と平等というジャスティス　→　生命体がたがいに依存し合って生きる関係のジャスティス＝グローバル・ジャスティス
むすび　都市への権利とは何か＝自由に都市をつくる権利